シネマ座の怪人

映画館に住みたい

夏はやっぱりポケモン映画だ「ミュウツーの郷愁」

8月22日。公開からもはや1ヶ月以上たっておりますが、ようやく『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』を見にいってきました。まだ劇場入場者特典のポケモンカード受け取れました。ほんと、すごい数を用意していますよね。他の映画(特にめっちゃかっこいいポスター配るやつ)は見習って欲しいものです。


それにしても、普遍的なテーマというのは、時代を越えても心に響きますね。このテーマで映画作って、悪いものができるはずがないんですよ。


それでは、ここからは鑑賞済み前提のがっつりネタバレ感想をお送りします。


ミュウツーの逆襲』という作品は、子供向けアニメーション作品でありながら、

なぜ自分は生まれたのか。
なぜ自分は生きているのか。
なぜ自分はここに在るのか。

そうした生き物の”個”の在り方に対する疑問と、

なぜ生き物同士争うのか。
なぜ”同じ”生き物同士争うのか。
なぜ争い続ける必要があるのか。

そうした生き物の”種”のあり方に対する疑問が、分かりやすく提示されています。

後者の”種”のあり方に関しては、これそのまま「戦争」のお話なのですね。同じ生き物同士、本当に争わなければならないのか。

例えば「ミュウとミュウツーが争い続ける限り、コピーと本物は戦いをやめられない」との台詞がありましたが、もし「国と国が対立した場合、個人も対立しなければならない」のでしょうか。ピカチュウニャースの選択が答えです。ピカチュウは自らの手を挙げない決断を。ニャースは相手の痛みを想像し思いやりを示しました。更には月を愛でるその心を風流と呼び、出自が違えども「文化」で繋がれることも示します。

今、我々を取り囲む情勢に当てはめても、なんだか当てはまる気がするのです。


まぁ、とにかくね、テーマが良い。
良すぎるんですよ……


ただ、これ、ここまでだと『ミュウツーの逆襲』の感想でもあって『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』特有の感想ではありません。


ここからはポケモンガチ勢のスイッチを入れて2作品を比較していきましょう。

先に申し上げますと、鑑賞後の勢いに任せてこの文章を書き始めた現在は、まだ評価に悩んでいるというのが正直なところですが、どちらかというとアリ寄りのアリです。


まずは、おそらく議論になる一つの点…… 原作完全版で追加された「アイツーのエピソード」*1 はカットして正解だったと思います。クローン問題を追求する上では必要エピソードですが、元々のメインテーマだけでボリューム一杯ですので、この点カットしてよくまとめたと思います。
*1 当エピソードにはミュウツーを生み出した博士の、この実験を始めたそもそもの動機が描かれている。博士は何も強いポケモンを作りたかったわけではない。彼にはアイという娘がいたのだ……


それから美麗なCGアニメーション。CG酔いすることもなく、とても綺麗でした。ガラスや液体、炎などの表現は本当に綺麗になりましたね。公開前には、CGにやや違和感を感じるなど不安もありました。ありましたが、声や効果音がいつものアニメと同じなので、なんだかんだですんなり入ることができました。

リメイクにおいて「同じ」というのは大切な点です。全体として、構図、台詞などかなり意識して再現されていて、原作に対する真摯な姿勢を感じました。

工夫がないとも取られがちですが、単純な「焼き直し」かというと、アレンジも多々見受けられました。


例えば、原作が初のポケモン映画作品だったということもあり、基本的には初代(第1世代)までのポケモンが登場しますが*2 、波止場の責任者であるボイジャーさんのセリフとエンドロールに「キャモメ」(第3世代)が登場。また、BGMではブラック・ホワイト(第5世代)の『ポケモンリーグ』や、サン・ムーン(第7世代)の『戦闘!野生ポケモン』も確認。ポケモンの技も、当時は存在しなかった「エナジーボール」「リーフストーム」が登場するなど、このように一部で世代が更新されています。

*2 この「世代」とはドラマでいうシーズンのようなもの。ポケモンのキャラクターの追加時期によって大きく分類される。現在は第7世代。2019年11月の新作で第8世代となる。ミュウツーの逆襲は基本的には第1世代のみでキャラ構成されている。ただし原作は金銀(第2世代)の発売を控えトゲピードンファンのみ先行登場した。


ただ、新たな世代のネタが盛り込まれているとはいえ、そこから何か新しい展開が起きるわけではなく、新しいものがポンと出てくるだけなのは少し気になるところです。
「カスミはギャラドスが苦手」という、今時その設定をどれだけの人が覚えているのかと疑問に思うほどのアニメオリジナル設定を再現するまでにリメイクに徹するなら、新世代のネタは無くてもよかったような気もするのです。
特にキャモメ。こうして一匹だけ、1998年の劇場版には存在しなかった新ポケモンが出てくるというのも逆に違和感を感じます*3。それなら、城に招待されたエリートトレーナー達の手持ちを変えるなどのアレンジがあっても良かったのではないでしょうか。
*3 ハギ老人をはじめ、キャモメを愛するトレーナーの方々、申し訳ございません。


……しかし本当に元の作品にあった要素をアレンジして変更して欲しかったのかというと、実際のところ、そのまま出てきて嬉しかった点が多々あるのも確かなのです。特に冒頭での「レイモンド」*4 再登場は感動に打ち震えましたね。
*4 「ポケモンバトル、デキルカナ?」と片言の日本語で勝負を仕掛けてきた男性。


本作は、サトシ、ピカチュウ、タケシ、カスミ、ムサシ、コジロウ、ニャースなど、21年の時を経てなお現役で同じ役をされている方がほとんどですが、レイモンドは長らくテレビでお見かけしなくなっていました。久々に連絡を取りたくなったテレ東から「連絡先求ム!」と「捜索願い」を出された事もあったほど。まさか再び映画館でそのお声を聞けることになろうとは!

映画館で耳にして感動したお声といえば、昨年亡くなられた石塚運昇さん…… オーキド博士のお声を劇場で聞けたのも良かったですね。正直「ポケットモンスター、縮めてポケモン」、このナレーションだけで古くからのファンは号泣です。

ミュウツー役の市村さんも、変わらず、再び逆襲のミュウツーとして再会。

そう、なんだかんだ言って、再び映画館で「馴染みの顔ぶれ」と出会えたことは素直に嬉しかったんですね。


そう思うと、これは、同窓会だったのでしょう。


同窓会。


ちょっと雰囲気が変わったヤツもいるけれど、だいたい基本的な所はみんな変わっていない。とすれば、なんだかんだで、本作、納得できるんじゃないでしょうか。リメイク作というのは、必ず昔の作品と比べられるので大変でしょうけれど、これはこれで良かったと思います。


それでは、みなさん、また来年。

 

 


アーボ足
エンドクレジット後、「次回2020年夏公開決定」の文字と一緒に現行アニメ柄(アローラシリーズ)の緩い作画のピカチュウが出てきて、それまでのCGとのギャップに笑ったのは吾輩だけではないはずだ。
あと、剣盾の予告にあったダイマックスバトルの場面、劇場の大画面で見るの最高に楽しかったので、Switchプロジェクターにつないで遊びたいです。

 

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