シネマ座の怪人

映画館に住みたい

ポケモン・イズ・リアル!!すごいぞ、実写版。『名探偵ピカチュウ』

ピカピカー!!ついに公開されました『名探偵ピカチュウ』!!世界に先駆けて日本で先行公開だって!?いいのかい!?ありがとう!!!

とにかく感想を言いたくて文章を書いていたら、こんなどうしようもない記事ができたのですが、とりあえず情熱と勢いの限りで公開してみます。以下もう普通にネタバレしていくので、要チュウ意。あと、愛が重いです。「うわ、」と思ったらすぐブラウザバック(死語)してください。まぁ…… 誰が何をしようと!ワタクシを止めることはできない!

 

◾️結構イケる実写版

いやもうね、結構イケるどころか、これもうほんと最高でした。正直な話、毛むくじゃらのピカチュウを初めて見たとき、「キモ」と思った人、挙手。はい。私もです。ごめんなさい。でもね、こちとら、ずっとゲームやテレビアニメの、輪郭のつるっとした印象なんですよ。昨年も映画ポケモン(みんなの物語)で、アニメのピカチュウがサトシにすり寄ったとき、毛がふさふさしている描写が一瞬入っただけで、「うわ、体毛だ」ってビビっていたんです。それが、毛だらけですよ。ところがどうにも、予告を何度も見ているうちに、キモかわいいを経て可愛いになっちゃってるんですよね。今思えば、去年のアニメ表現はこのリアル描写までの緩衝材だったのでしょうか。

それにしても、キャラクターアレンジ、3次元への落とし込みがすごくうまい。ピカチュウ一匹とっただけでも、体毛が真っ黄色じゃなくて、微妙にムラがある。それもちょっとお腹のあたりが白っぽい。今のポケモンゲームの公式絵はそれこそ真っ黄色なんですけれど、初代の水彩画のピカチュウは塗りムラで所々白っぽいんですよね。懐古厨※1 ならほぼ全員が「あ、初代」って、思ったと思います。そういう原作に対するリスペクトが感じられるから、こじらせオタクでも好意的に全部受け止められるんです。リザードンの鱗やコダックの毛も受け入れられる。だって真面目に大人がポケモンを考察しているって、見れば分かるからね☆

※1 懐古厨:初期の頃のポケモン愛を特にこじらせたオタクの事

 

◾️はじまりを告げる鳥

ハリウッド映画って、なんか鳥が飛んでいって物語始まるパターン結構多いんですよね。それがちゃんとポケモンでも見られる。これは、ハリウッド映画なんだ!!しかも、飛ぶのはポッポ系。鳥ポケモンがもう何十種類といる中で、ポッポ。マサラタウン※2 から旅立ったことがあるトレーナーなら、多分、これだけで「はじまりの町」って分かっちゃう※3。でもここ、もうひとつ見所があって、建物の向こうに、ドードードードリオがいるんです。ドードリオ。そうです、アニメ第1話です。サトシ少年がマサラタウンを旅立つその日の朝が来たとき、鳴いていた鳥。ドードリオ。ここは間違いなく、この物語においての、はじまりの町。ティムと、映画を見る私達観客にとってのマサラタウンなのです。急所に当たった!涙腺が負けそう。

※2 マサラタウン:一番はじめに発売されたポケモンのゲームで主人公が旅立つ町

※3 ポッポは主人公が初めて踏み入れる道(1番道路)で出るポケモンの代表

 

◾️人とポケモンとの距離感

ティムと友人の会話から、この世界ではポケモンを持つ人間と持たない人間がいるとすぐに分かる、この世界観の解説場面。特に原作ゲームをやっている人間は、みんなポケモントレーナーとして世界に投げ込まれてしまうので、ポケモンを持つことが当たり前だと思いがちなのですが、一旦ここでポケモンは必須じゃないと教えてくれる親切設計。「みんなの物語」でも描かれていた世界観ですね。それぞれに、それぞれのポケモンとの距離感がある。ポケモンマスターも、誰もがなれる職業ではないと分かる。でもカラカラを前にしたときのティムは、とっさのことでも、さらっとカラカラの知識が出てくる(孤独ポケモンで、母親の骸骨を頭にかぶっている)。今は会社員をしている彼が、かつてはポケモンマスターを夢見た何よりの証拠。そういうのが、短い時間にきっちり詰まっているんです。すごい。そしてもう一つ、大事な表現があるんです。

ポケモンを持たずに草むらに入るべからず。

いままで何回止められた事か※4。カラカラの攻撃、どう考えても「危ない」。ティムも普通に吹き飛ばされていましたが、進化前の小さなポケモンの技ですら、あの威力です。人間が立ち向かって良いわけないんですよ。見た目が可愛いと忘れがちですが、ポケットモンスターは、ポケットに入るが「モンスター」である事を忘れてはいけない※5。その辺が冒頭で実は一気に説明されているんですよね。この駆け足で、ゲームをやった事が無い人にどこまで通じるかどうかはさておき……

※4 ゲームでは、ポケモン博士にパートナーとなるポケモンを貰うまでは、草むらに入ろうとすると「草むらにひとりで入ると危ないよ」と住人に止められるのが定番。

※5 ポケモンはかつてゲームでは正しく「モンスター」として表現されていました。気になる方は「青版 ゴルバット」や「青版 ナッシー」で画像検索。こんなん遭遇したら怖いて。

 

◾️ライムシティ半端ないって

そんなん実写でできひんやん普通、そんなん出来る?言うといてや、出来るんやったら…… 人とポケモンが共存する世界、美しすぎるやん。案内動画とか、何回でも見たい。消防団員の消火を手伝うゼニガメや※6、いかにも「ポケモントレーナーです」って風貌の人物がポケモンバトルしている映像とか胸熱ですよ。てか、ビルナイじゃん。偉い人、ビルナイじゃん。ベテラン俳優殿がこんな所で何してるんすか。渡辺謙は流石に知っていたけれど、ビルナイは出るって知らなかったからびっくりした。話が逸れた。ライムシティですよ。高所の現場に物資を運ぶウォーグル、町を往く人々、ポケモン、交通整理をするカイリキー、しかも交通整理が必要となった理由がカビゴンじゃないですか※7。警察署の前にいかにも守護兵のように佇むゴルーグといい、署員とともに歩くガーディといい、はああああ、最高かよ。映画を見ている間、隣に座っていた海外の方がこの辺で泣いていましたが、私も泣きました。かつて夢見たポケモンの世界が眼前に広がっているのですから。

※6 消火を手伝うゼニガメ:名作といわれるアニメ(第12話)へのオマージュ。悪さをするゼニガメが人間と出会い一転。「ゼニガメ消防団」を結成し、以後、町の防災活動に協力した。人とポケモンが協力する世界を表す良エピソード。

※7 カビゴン:食べては寝る体の大きなポケモンカビゴンが寝てしまうと細い道なんかは通れなくなる。ゲームでもとうせんぼされて通周りしたっけ。

 

◾️ケン・ワタナベの無駄遣い

この一言につきます。これあれや、町の住人に話しかけたら鍵をもらえるイベント…… それにしてはめっちゃ豪華なキャスティング。贅沢とはこの事ですね。日本のコンテンツなので、日本人キャストを採用していただけたものとお察しいたします。ありがとうございます。ブルーのことを「怖い顔をしているが可愛いやつだよ」とティムに紹介するも、凄まれるとやっぱりちょっとビビってしまう、吉田警部補のポケモンとの距離感がまた絶妙。でも「可愛いやつ」だと思っているんですよね。愛を感じます。ありがとうございます。

 

◾️ピカピカ!!

ピカ!ピカピカピカピカ!!ピカピカピカピカピカピカ!ピカピカピカピカピカピカピカピカピカ!ピカピカピカピカ!!ピカピカピカピカピカピカピカピカピカピカ!ピカピカピカピカピカピカピカピカピカ!ピカピカピカピカ!!ピカピカピカピカピカピカピカ!ピカピカピカピカピカピカピカピカピカ!ピカピカピカピカ!!ピカピカピカピカピカピカ!ピカピカピカピカピカピカピカピカ!!!

 

……え、マジで可愛いんですけど。そういえば、予告でティムがホッチキスをピカ様に突きつけていた理由が、本編見てようやくわかりました。ホッチキスをかちゃかちゃすると、まるで銃のような音がするのですね。おもしろいから今度練習しておこう。

 

◾️「R」って?

結局、何の頭文字だったのか言及さない「R」。しかし長年のファンは「R」といえば、原作での悪の組織「ロケット団」を思い浮かべるので、ミスリード要素としても、「なんだか嫌な感じ」がする要素としても、作用する。たった一文字だが、このアルファベットの使い方は非常にうまい。

 

◾️バーのプリン、港のバリヤード

バーのプリン。全く、シナリオに関係ない。歌っているだけ。でも「プリンの歌声を聴くと眠ってしまう」という設定がしっかり再現されている。最初に荒ぶった通り、世界感の描き方が本当に丁寧。ティムがピカチュウと話すとき、携帯電話をダミーで使うことで、どれだけポケモンと話すことが異常なのかを再確認。あと、ピカチュウとルンパッパの会話から、鳴き声は違っても、ポケモン同士、言葉が通じると分かります。ところが!港の倉庫街に潜むバリヤードは、鳴かない。アイデンティティであるパントマイムを駆使して要件を伝えてくるため、ピカチュウとは会話が成立しないんですよね。でもティムはそのポケモンの特徴をちゃんと知識として持っているので問題ありません。はあぁっぁぁああぁ、細かい!表現が地味に細かいでござるうううう!!最高。

 

◾️闘技場

ポケモンバトル非推奨の街ではポケモンバトルは地下競技となるあたり、アツさとリアリティをうまく両立していると思う。爆音で鳴くドゴームがBGMとしてステージを盛り上げているのもいい。こういうね、バトル以外のポケモンの使い方、いいぞ〜 そしてここで我が嫁ポケモンが出てきます。ゲンガーーー!!!バトルで人気あるカッコイイポケモンです。カッコイイ……(溜息)そもそもガンガーは、ゲームの初代オープニングでバトル場面があるので、その辺りからのチョイスでしょう。

ピカ様vsリザードンのバトルも見所沢山ですね。なによりピカチュウがティムの命令を無視するのが最高です。ポケモン原作の設定を思い出しましょう。ポケモンが、トレーナーの指示を無視する条件。ジムバッジが足りていない時に他人から譲り受けた強いポケモンは、トレーナーが未熟だと判断すると言うことを聞いてくれない。つまり、いくら闘技場で突然ティムがピカチュウが覚える技を羅列して、トレーナーを目指していた知識ある人間だとアピールしても、ピカチュウはこの時点ではティムのことをトレーナーとして信用していないという。それも「ボルテッカーは自分も痛いから10万ボルトで」とか舐めたこと言うんですよ※8。ああ、ゲームでポケモンがいうことを聞いてくれない時も、きっとこんなんなんだろうなぁ。「ハイドロポンプは疲れるから水鉄砲な」みたいな。ふざけんな。ハイドロポンプ以外の技全部忘れさせるぞ。

※8 ボルテッカーは、ピカチュウの必殺ワザ。だが、威力が高い反面、突撃の反動で自分もダメージを受けてしまうため、HPが多くないピカチュウにとってはリスクも高い。

 

おっと、そしてここで忘れちゃいけないのが、ピカチュウ・キャッチ・チャレンジだ。空から落ちてくるピカチュウをティムがキャッチする場面。アニメで何度も見たような光景、おもわずティム君にサトシ少年が重なって見えました。相棒のことを守るべく、自分の身を投げ打つティム。ようやく、真の意味で、相棒に、なれた!?

 

◾️ドダイトスの庭

多分、みんな言及していると思うけど。凄いね。凄くいい。この映画、ポケモンの世界をどんどん掘り下げていきますよ。あの巨大なドダイトス、普通の大きさのドダイトスが出てきた時点で、大きなドダイトスが出てくることは予想がつきましたが、あのスケール感、流石に驚きました。ポケモン図鑑で確認できるドダイトスのサイズは2.2mなので、あれがいかに巨大な事か。ポケモン図鑑を開いたついでに図鑑の説明文を見ましょう。

「小さなポケモンたちが集まり、動かないドダイトスの背中で巣作りを始めることがある(D)」

「移動する森の正体は水を探して住処を移すドダイトスの群れだ(P)」

ドダイトスの背中で生まれてドダイトスの背中で一生を全うするポケモンもいる(pt)」

「大昔の人々は大地の下には巨大なドダイトスがいると空想した(HGSS)」

……この、数少ないフレーバーテキストから「アレ」を生み出したわけです。解釈が完璧すぎませんか。ゲームにはあんな場面一切ないのに、あの景色ですよ。ご丁寧に、ちゃんと水場まである。ヒエッ!!それでこの場面、特に本編で重要な役割は無いっていうね。でも『パシフィック・リム』や『GODZILLA』を世に送り出してきたレジェンダリー社らしくて、良いと思います。こんなのが映画館で拝めるだなんて奇跡ですわ。

あ、ドダイトスに気をとられがちですが、ゲッコウガも良い動きをしていました。水手裏剣やっぱかっこいいですね。NINJAはあれかな、やっぱりハリウッド映画のロマンかな。

そういえばこの辺で、最初はフワフワだったピカ様の毛並みがダメージ受けてバシバシになってきて悲しかったです。いつだったか、ゲームでバトル後のブラッシング機能がオマケで実装されたけど、あれ必要動作だったんだな……

 

◾️そして彼の歌う歌は……

なんやかんやあって、ちょっと泣きながら(泣かないでッ!!!!)ピカ様が元気を出そうとして歌っていた歌、歌ーーーーーー!!!!?????? ち、ちょっと待ってくれ、そ、その歌は、初代、英語版 アニメ ポケットモンスターの主題歌ではないですか!!つまり日本でいう「めざせポケモンマスター」!!その伝説の懐かしのアニソンを、ライアン・レイノルズともあろうハリウッドスターが歌っている。なにそれ凄い。フル版聞きたいんですけど。とりあえず、ポキモンのテーマは確かに元気が出るのでオススメです。

 

(うーん、残念ながら、吹替え版でのここの再現度は低め。英語版の歌を日本語に吹き替えて歌っているせいで、ピカチュウが思いついたオリジナルソングを適当に歌っているみたいになっている)

 

◾️パレードの風景、現実との境界

さて、相対するべき敵も分かって、本拠地にやってきたティム。あのポケモンの見せ場です。あのポケモンといえば、ああっ、目が!!とても、残念!!好き(好き)。変身ポケモンであるメタモンは、何にでもほぼ完璧に変身できますが、目だけは元の点状態となるのがお約束。頑張ってるんですけどねぇ。そのヌケた表現までああして実写で再現されたら、笑っちゃいますよ。そりゃ!本当に、芸が細かいです。ちなみにこの設定は元々ゲームにはない、アニメオリジナル設定なので、製作陣はおそらくかなりオタク。

そしてシナリオは超展開に。ここで出てくるバルーンやテレビに映るビジュアル映像には、元のアニメタッチが採用されているんですよね。ここで絶妙に、メタいレベルで我々の現実世界に寄せてくる。なにより、このパレード自体が、かなり現実にリンクしているんです。こうしたバルーンを使用したパレードは、実際にニューヨークのサンクスギビングデーで行われており、ピカチュウのバルーンも実際にその場にお見えします。現実世界で実際にあるお祭りと、現実世界で実際に流通するアニメイラストを持ってくることで、さらに増すリアルティ!

 

……と、以上、駆け足で解説いたしましたので、まだまだ話し足りませんが、本作は、全編を通して、ありとあらゆる点で、現実世界にポケモンを落とし込む努力がされている事が、すごくすごくすごくすごく、感じられるんです。それがまた真剣で、ファンとして、これほど真摯な実写版に出会えて嬉しいかぎり。この世界観の作り込みのすばらしさだけで1億点は付きます。私が付けます。

 

吹き替え版は吹き替え版で、アニメ版のオリジナル声優さんが多用されていて、これがまた妙に違和感が、なくて、よい!!ムサシとコジロウの声?ポ、ポケモンだ〜!!

渡辺謙による渡辺謙の吹き替えも必見!

 

は〜 ポケモンは癒しだわ。